<< 告知(1) | main | 私の願いが引き寄せた!…か?? >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2007.05.22 Tuesday |  | - | - | - | 

告知(2)

 車椅子に座った母はうつむいたまま、何も言わない。
しばらくして、「…先生にあがんふうに言われたら、言うとおりにこの病院入って、治療した方がいいとかな?って気にもなる……」そうは母言った。

 すると兄が切り出した。
「ホントは3日前から僕たち知っとったとよ。それでね、二人でこの3日間いろいろ調べてみてガンは治る病気って確信した。先生は抗ガン剤ば勧めたけど、僕たちはそうは思わん。お母さんの体ば痛めんで治す方法は他にいっぱいある。今、免疫の落ちた状態のお母さんの体に抗ガン剤ば使ったら、たとえガンは小さくなっても、他の健康な細胞までめちゃくちゃにしてしまう。僕たちはガンだけなくせばいいとは思っとらんちゃん。元通りの普通の生活ばさせたかと、お母さんに。そのために必要な治療は僕たちが用意しとる。そいけん、何も心配せんで、僕たちについて来てくれんね?」

まだは母うつむいたままだった。

「お母さんの病気のおかげで、ウチたちいっぱい勉強になったとよ。ウチたちは先生みたいに専門知識も経験もなか。でもね、お母さんば治すための執念だけは、絶対にどがん立派な先生にも負けん。ウチたちがお母さんのガン、必ず治してやる。どうせ命ば預けるなら、他人より身内の方がよかやろう?」出来る限りの明るいトーンで私はそう言った。

そして母ははじめて泣いた。青空の下で母は、顔を両手で覆い、子供のように声を上げて泣いた。
先生の前ではずっとこらえてたんだ、そう思うとよりいっそう母が愛しくなり、泣き止むまでそっとその背中を擦った。
そして言葉に詰まりながら、少しずつ話しだした。
「……お母さん悲しくて泣きよるっちゃないと。…死ぬとはいっちょん恐くないとよ。あんた達が……お母さんのためにそこまで考えてくれとったとかって思ったら、もう感謝の想いで涙のでてくると……」


 母は長年、天のため、ご先祖のため、家族のために生き、深い信仰を持って人生を送ってきた人だ。今私達がこの世で生きていることには意味がある。自分に与えられた試練、課題は乗り越えるために天が下さったもの。それを感謝して昇華することがこの世での人間の務めのひとつである、そうやって母は自分の人生を生きてきた。そして今までも、母には大きな試練を乗り越える決意をしたとき、神がかった享受を受け、その試練を乗り越えたという経験が何度もあった。
 その一方で、母はひとつだけ心に引っ掛かりを持っていた。母の同級生でもあり教会での親友でもあるアイコちゃん(彼女も天のために尽くし、何度も奇跡を経験した人だ)、彼女がいつも母に言う言葉があった。
「あんた、感謝よ!自分の周りのすべてに感謝するとよ、ウチは。人に対しても、仕事に対してもそう、苦労に対してもそう。感謝せんばよ」
「…そうねぇ……」


「アイコちゃんがいつも私に言いよった、『感謝よ、感謝』って。お母さんも、頭ではよう分かっとるとよ。でもその感謝ば心底実感したことの無かった。死ぬまでお母さん、感謝の意味分からんままかもしれんって思いよった。でも今あんた達二人に教えてもらった。感謝の気持ちで涙の出るなんて、お母さん、生まれて初めて知った……。さっきガンって聞いたときはお母さんは天に見捨てられたとかって思った。でもあんた達の言葉ば聞いて、そうじゃなかって分かった。……この身をもって教えてもらったとねって思った、お母さん神様に愛されとったって…」

「そうよ、これはお母さんへの最大の試練よ。でも神様はその人が乗り越えられる大きさのものしか与えんとばい。お母さんは必ず超えきる。お母さんが今までご先祖様のためにどれだけ一生懸命してきたか、神様はちゃんと知っとるとよ。ホントに見捨てられたとなら、交通事故とか心筋梗塞とか、そがんとで何も考えるヒマなくポックリいっとるかもしれんとばい。この病気になったことで、お母さんやウチたちが学ぶことがまだこれからあるはず。今までうちは家族バラバラやったと思う。時間をかけて、自分達の生活環境とか、絆を見直せって教えられとる気のするとさ。……だけん、ウチらと一緒に治そう」
私の言葉に、母はただただうなずいていた。

 母の体と心が万全でない今、これ以上の検査入院に私達は不安を感じた。もしかしたら告知で気持ちが落ち込んだせいで、免疫が落ちたかもしれない。また、CT検査などの放射線を使用した検査を行うと、必ず深い疲労感が訪れて体調を崩すというガン患者の方の話も聞いたことがあった。こんなに落ち込んだ母をたった一人、このハコの中に残して帰ることも嫌だった。確かにこれからどんな治療をするにしても、この検査は必要だとは思うが、今の状態の母にとってはなるべく避けたいと感じた。もう少し体調を整えてから検査に臨みたかった。そこでS先生には申し訳なく思ったが、今日の検査はこれ以上受けないことにした。

 ガン宣告を受けたばかりで、どんな人でもそんなにすぐに気持ちの切り替えはできない。でも、私達に残された時間は限られている。一歩一歩でも、前に進んでいくしかないのだ。まだ戸惑いがちな母を連れて、病院を後にした。
2007.04.25 Wednesday | 02:13 | comments(0) | trackbacks(20) | 家族で挑むガン闘病記 | 

スポンサーサイト

2007.05.22 Tuesday | 02:13 | - | - | - | 









-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 2:32 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 3:01 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 3:15 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 8:36 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 9:52 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 10:27 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 10:38 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 11:15 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 11:41 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 11:56 AM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 12:01 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 1:00 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 1:14 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 2:21 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 3:29 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 6:00 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 6:03 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/25 10:02 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/04/27 12:52 PM |
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
| - | 2007/05/03 11:38 PM |